



1.雇い入れ時の健康診断(安衛則 第43条)
労働安全衛生規則 第43条では、労働者を雇い入れた際に健康診断を行うことが義務づけられています。健康診断項目は次のとおりです。
- 1.既往歴 および業務歴の調査
- 2.自覚症状 および他覚症状の有無の検査
- 3.身長 ・体重・BMI・腹囲・視力・聴力の検査 (聴力は1000Hzと4000Hz)
- 4.胸部 エックス線検査
- 5.血圧測定
- 6.貧血検査 (血色素量・赤血球数)
- 7.肝機能検査 (γ-GTP・AST・ALT)
- 8.脂質検査 (LDL-コレステロール・HDL-コレステロール・トリグリセライド)
- 9.糖尿病検査(血糖)
- 10.尿検査 (糖・蛋白)
- 11.心電図検査 (安静時 12誘導)
(注) 雇い入れ時の健康診断では、健康診断項目の省略等はありません。
2.定期健康診断 (安衛則 第44条)
労働安全衛生規則 第44条では、1年以内ごとに1回定期的に健康診断を行うことが義務づけられています。健康診断項目は次のとおりです。
- 1.既往歴 および業務歴の調査
- 2.自覚症状 および他覚症状の有無
- 3.身長・体重・BMI・腹囲・視力・聴力の検査 (聴力は1000Hzと4000Hz)
- 4.胸部 エックス線検査および喀痰検査
- 5.血圧測定
- 6.貧血検査 (血色素量・赤血球数)
- 7.肝機能検査 (γ-GTP・AST・ALT)
- 8.脂質検査 (LDL-コレステロール・HDL-コレステロール・トリグリセライド)
- 9.糖尿病検査(血糖)
- 10.尿検査 (尿中の糖および蛋白の有無の検査)
- 11.心電図検査 (安静時 12誘導)
(注) 次の場合、医師が必要でないと認めるときは健診項目を省略できます。

※身長については、20才以上の人
※腹囲については、(1)40歳未満の者(35歳の者を除く)、(2)妊娠中の女性その他の者であって、その腹囲が内臓脂肪の蓄積を反映していないと診断されたもの、(3)BMI(次の算式により算出した値をいう。以下同じ。)が20未満である者 BMI=体重(kg)/身長(m)2、(4)自ら腹囲を測定し、その値を申告した者(BMIが22未満である者に限る。)
※聴力は1000Hzと4000Hzの純音を用いるオージオメータによる検査を原則としますが、35才、40才を除く45才未満の人は医師が適当と認める聴力検査方法による ことができます。
※喀痰検査は胸部 エックス線によって疾病の発見されない人や、結核発病の恐れがないと診断された人は省略できます。
※35才未満および36~39才の人は6~9と11の項目を省略可。
※10 の尿中の糖の検査については、血糖検査実施時

3.特定業務従事者の健康診断 (安衛則 第45条)
通常の定期健康診断と同じ項目を6ヶ月以内ごとに1回 、定期的に行うことが義務づけられています。省略基準等についても通常の定期健康診断の場合と同じですが、さらに下記 ※ 印のような省略等が認められています。
深夜業を含む業務や暑熱な場所 ・ 寒冷な場所における業務など定められた14種の労働衛生上有害な業務 (安衛則 第13条)に従事する労働者に対し、これらの業務への配置換えの際 および6ヶ月以内ごとに1回 "定期健康診断" を実施することが義務づけられています。

※胸部エックス線検査は1年以内に1回、定期的に行えばよい。
※貧血検査 ・肝機能検査 ・血中脂質検査 ・血糖検査および心電図検査については、前回 (6ヶ月以内) 受けた人は医師が必要でないと認めるときは省略可。
※聴力検査はオージオメータによる1000Hzと4000Hzの純音を用いる測定を原則としますが、前回 (6ヶ月以内)このような聴力検査を受けた人は 医師が適当と認める検査方法によることが出来ます。

4.海外派遣労働者の健康診断 (安衛則 第45条の 2)
海外に6ヶ月以上派遣される労働者についてはその派遣前および帰国後に事業者による健康診断が義務づけられています。健康診断項目は次のとおりです。
- 1.既往歴 および業務歴の調査
- 2.自覚症状 および他覚症状の有無の検査
- 3.身長・体重・BMI・腹囲・視力・聴力の検査 (聴力は1000Hzと4000Hz)
- 4.胸部 エックス線検査および喀痰検査
- 5.血圧測定
- 6.貧血検査 (血色素量・赤血球数)
- 7.肝機能検査 (γ-GTP・AST・ALT)
- 8.脂質検査 (LDL-コレステロール・HDL-コレステロール・トリグリセライド)
- 9.糖尿病検査(血糖)
- 10.尿検査 (尿中の糖および蛋白の有無の検査)
- 11.心電図検査 (安静時 12誘導)
医師が必要と認めた場合に行う検査項目
- 12.腹部画像検査 (胃部エックス線検査 ・ 腹部超音波検査)
- 13.血液中の尿酸の量の検査
- 14.B型肝炎ウイルス抗体検査
- 15.血液型検査 (ABO、Rh式) ※派遣前
- 16.糞便塗抹検査 (寄生虫) ※帰国後

※身長の検査及び喀痰検査は、医師が必要でないと認めるときは省略できます。この場合省略基準は、一般定期健康診断の場合と同じです。
※雇入時健診 ・ 定期健診 ・ 特定業務従事者の健診 ・ 特殊健診 を受けた人は当該健康診断実施の日から6ヶ月間は同一の検査項目を省略することができます。
※35歳を除く40歳未満の人は医師の判断により腹囲は省略することができます。

5.結核健康診断 (安衛則 第46条)
一般健康診断で結核のおそれがあると診断された労働者に対しては、6ヶ月後に次の項目の結核健康診断を行わなければなりません。
- 1.エックス線直接撮影による検査および喀痰検査
- 2.聴診、打診その他必要な検査
※聴診、打診については、医師が必要でないと認めるときは省略することができます。
6.給食従業員の検便(安衛則 第47条)
事業場付属の食堂または炊事場における給食の業務に従事する労働者に対しては、雇い入れの際または配置換えの際、検便による健康診断を行わなければなりません。
7.自発的健康診断(安衛法 第66条の2)
常時使用される労働者であって、過去6ヶ月間に平均して1ヶ月あたり4回以上、深夜業(午後10時から午前5時までの間における業務をいう。)に従事した労働者は、自ら受けた一定の健康診断の結果を証明する書面を事業者に提出できることとなりました。事業者は、従来からある労働安全衛生法上の健康診断と同様、その結果が有所見であった場合、医師からの意見聴取、適切な就業上の措置などの事後措置を講じなければなりません。なお自発的健康診断の項目は、定期健康診断項目(安衛則第44条)と同一です。また、事業者に自発的健康診断の結果を提出することができるのは、当該健康診断を受けた日から3ヶ月以内です。


1.じん肺健康診断 (じん肺法 第3条)
新たに常時粉じん作業に従事することとなった人および常時粉じん作業に従事する人でじん肺所見のない人は3年以内ごとに1回、実施します。常時粉じん作業に従事する人でじん肺管理区分 2 ・3の人は1年以内ごとに1回実施します。現在は粉じん作業以外に従事しているが、過去に従事しじん肺管理区分2の人は3年以内ごとに1回、管理区分3の人は1年以内ごとに1回、実施します。
- 1.粉じん作業についての職歴調査
- 2.胸部 エックス線直接撮影
- 3.胸部の自・他員所見の有無の検査
- 4.肺機能検査
※X線検査でじん肺所見が認められた者に行う
2.石綿業務健康診断(石綿障害予防規則 第40条)
石綿を製造し、もしくは取り扱う業務等に常時従事する者、過去に石綿を製造し、または取り扱う業務に常時従事したことのある在籍者に対し、雇入れ、配置替えの際及びその後の6ヶ月以内ごとに1回定期に実施する。
- 1.業務歴の調査
- 2.石綿によるせき、たん、息切れ、胸痛等の他覚的、自覚的症状の既往歴の有無の検査
- 3.せき、たん、息切れ、胸痛等の他覚的、自覚的症状の有無の検査
- 4.胸部エックス線直接撮影
3.電離放射線業務健康診断 (電離放射線障害防止規則 第56条)
放射線業務に従事する人に対し、雇い入れ・配置換えの際 およびその6ヶ月以内ごとに1回、定期に実施します。
- 1.被爆歴の有無の調査
- 2.白血球数 および白血球百分率の検査
- 3.赤血球数 および血色素量またはヘマトクリット値の検査
- 4.白内障に関する眼の検査
- 5.皮膚の検査
白血球百分率の検査および白内障に関する眼の検査、皮膚の検査については、 医師が必要ないと認めるときは省略可。
4.鉛業務健康診断 (鉛中毒予防規則 第53条)
鉛業務に従事する人に対し、雇い入れ・配置換えの際 およびその6ヶ月以内ごとに1回、定期に実施します。
- 1.業務の経歴の調査
- 2.(1)鉛による自覚症状 および他覚症状の既往歴の有無
(2)血中鉛、尿中デルタアミノレブリン酸量の既往の検査結果の調査
- 3.鉛による自覚症状 および他覚症状の有無
- 4.血中鉛の量の検査
- 5.尿中デルタアミノレブリン酸量の検査
医師が必要と認める場合に実施する項目
- 6.作業条件の調査
- 7.貧血検査
- 8.赤血球中のプロト ポルフィリン量の検査
- 9.神経内科学的検査
※鉛およびデルタアミノレブリン酸は前回 (6ヶ月以内) 行われており、医師が必要ないと認めるときは省略可。
5.四アルキル鉛健康診断 ( 四アルキル鉛中毒予防規則 第22条)
四アルキル鉛業務に従事する人に対し、雇い入れ・配置換えの際 およびその後3ヶ月以内ごとに1回、定期に実施します。
- 1.いらいら、不眠、悪夢、食欲不振、顔面蒼白、倦怠感、盗汗、頭痛、振せん、四肢の腱反射亢進,
悪心、嘔吐、腹痛、不安、興奮、 記憶障害その他の神経症状または精神症状の検査。
- 2.血圧の測定
- 3.血色素量または全血比重の検査
- 4.好塩基点赤血球数または尿中のコプロポルフィリンの検査
6.有機溶剤業務健康診断 (有機溶剤中毒予防規則 第29条)
屋内作業場等で有機溶剤業務に係わる人に対し 、雇い入れ・配置換えの際およびその後6ヶ月以内ごとに1回、定期に実施します。
- 1.業務の経歴の調査
- 2.(1)有機溶剤による健康障害の既往歴の有無の調査
(2)自覚症状 および他覚症状の既往歴の有無の調査 (3)【 別 表 】 に掲げる尿中有機溶剤代謝物量の検査の既往歴の調査 (4)尿中蛋白と尿中有機溶剤代謝物量の検査を除く項目 および医師が必要と認める項目の 異常所見の既往の有無の調査
- 3.有機溶剤による自覚症状 および他覚症状の有無
- 4.尿中蛋白の有無の検査
- 5.【 別 表 】 に掲げる有機溶剤区分に応ずる項目の検査
医師が必要と認める場合に実施する項目
- 6.作業条件の調査
- 7.貧血検査
- 8.肝機能検査
- 9.腎機能検査 (尿中蛋白は除く)
- 10.神経内科学的検査
※尿中有機溶剤代謝物量の検査は前回 (6ヶ月以内) 行われており、医師が必要ないと認めるときは省略可。
7.特 定化学物質健康診断 ( 特定化学物質等障害予防規則 第39条)
特定化学物質を取り扱う業務に係わる人に対し、雇い入れ・配置換えの際およびその後6ヶ月以内ごとに1回、定期に実施します。また過去に特定物質を取り扱ったことのある人についても6ヶ月以内ごとに同様の健診をします。
8.高気圧業務健康診断 ( 高気圧作業安全衛生規則 第38条)
雇い入れ時、当該業務への配置換え、 およびその後6ヶ月以内ごとに1回定期に実施します。
- 1.既往歴および高気圧業務歴の調査
- 2.関節、腰もしくは下肢の痛み、耳鳴などの自覚症状または他覚症状の有無の検査。
- 3.四肢の運動機能の検査。
- 4.鼓膜 および聴力の検査。
- 5.血圧の測定並びに尿中の糖 および蛋白の検査。
- 6.肺活量の測定。
以上の結果医師が必要と認めた場合
- 7.作業条件調査。
- 8.肺換気機能検査。
- 9.心電図検査
- 10.関節部 エックス線直接撮影による検査
別表
有機溶剤の種類 |
有機溶剤の種類 |
エチレングリコールモノエチルエーテル (セロソルブ) エチレングリコールモノエチルエーテル アセテート(セロソルブアセテート) エチレングリコールモノブチルエーテル (ブチルセロソルブ) エチレングリコールモノメチルエーテル (メチルセロソルブ) |
血色素量 赤血球 (貧血) |
オルトージクロルベンゼン クレゾール クロルベンゼン クロロホルム 四塩化炭素 1.4-ジオキサン 1.2-ジクロルエタン (二塩化エチレン) 1.2-ジクロルエチレン (二塩化アセチレン) 1.1.2.2-テトラクロルエタン (四塩化アセチレン) |
AST ALT γGTP (肝機能) |
トルエン |
尿中馬尿酸 |
キシレン |
尿中メチル馬尿酸 |
スチレン |
尿中マンデル酸 |
N.N-ジメチルホルムアミド |
尿中メチルホルムアミド AST・ALT・γGTP |
テトラクロルエチレン (パークロルエチレン) トリクロルエチレン |
尿中トリクロル酢酸 又は、総三塩化物 AST・ALT・γGTP |
1.1.1・トリクロルエタン |
尿中トリクロル酢酸 又は、総三塩化物 |
ノルマルヘキサン |
尿中2.5ヘキサンジオン |
二硫化炭素 |
眼底検査 |
注)記載の有機溶剤それぞれについて、濃度が5% (重量比) を越えて含有する物に係る場合も該当します。

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